東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1069号 判決
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【判旨】
「(三) 被控訴人が本件事故により昭和五〇年一月二〇日から同年二月二五日まで三七日間入院を余儀なくされたことは先に認定したとおりである。
そして、<証拠>を総合すると、(1)被控訴人は、本件事故による頭部外傷により脳に障害を受け、自覚症状としては頭痛があり、半年に一回の割合で通院して脳波検査を受けているところ、昭和五二年一月の検査によれば「後頭部を中心に徐波化し、他に全般的に徐波傾向が認められる」とされ、昭和五四年一一月の検査でも脳波に異常が認められたこと、昭和五五年七月の検査では改善傾向が認められたが、なお異常は消失していないこと、原告は医師から右の脳の障害のためけいれんの発作がおきる可能性があると言われ、不安な毎日を過ごしてきており、過激な運動を差し控えるよう、また水泳などの場合には発作に備えて附添人をつけるよう指示されていること、(2)被控訴人は、本件事故により左側頭骨が骨折し、そのため左耳に伝音性難聴を伴う神経難聴が生じており、右障害は昭和五一年一一月五日症状が固定し、同日のオーディオメーターによる検査では8000cpsで35dbの聴力喪失が認められたこと、日常生活においては、特に風邪などにより体の具合が悪い場合や激しい運動をしたあと、長時間勉強をしたあと等に耳鳴りがして普通の話し声が聞こえなくなることがあること、(3)被控訴人には、前記左側頭骨骨折を原因とする左鼓索神経障害により舌左前半部に味覚障害が生じており、右障害は今後治ゆする見込みがないこと、以上の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
もつとも、被控訴人の右(1)ないし(3)の各後遺障害について、いずれも自賠法施行令上の後遺障害に該当しない旨の認定が昭和五三年四月一二日千葉調査事務所長によつてなされたことは当事者間に争いがなく、右調査事務所長の認定を不当とするような資料はないから、被控訴人の右各後遺障害はいずれも自賠法施行令上の後遺障害には該当しないものと認めざるをえない(このことから直ちに、被控訴人の右各後遺障害が金銭をもつて慰謝すべき程度に達していないものといえないことはいうまでもない。)。
以上認定した入院期間及び各後遺障害の内容、程度に、本件事故の態様、被控訴人の年齢その他本件にあらわれた諸般の事情を総合して勘案すれば、本件事故により被控訴人が被つた精神的苦痛に対する慰藉料としては、金四〇〇万円をもつて相当と認める。」
(小林信次 浦野雄幸 河本誠之)